不動産を売却した場合、その代金や契約締結に課税があります。税率や課税価格について押さえておけば、最終的にいくら手元に残るのか具体的に予測できるでしょう。
特別控除等が付く制度も把握しておくと、損も避けられます。
譲渡所得税│売却代金にかかる税金
不動産を売却した場合、翌年2月中旬~3月中旬にかけて確定申告しなければなりません。売却で得た代金が「譲渡所得」として扱われ、所得税と住民税がかかるためです。
課税される所得金額
売却代金に対する課税と言っても、まるまる賦課対象となるわけではありません。買った時の値段である「取得費」、そして売却手続きでかかった費用である「譲渡費用」の2つが控除され、その結果が課税譲渡所得金額となります。
なお、戸建やマンションの場合、②には資産価値の減少分が考慮されます。この「減価償却費」により、所有期間に応じて控除できる額が減るとも言えます。
譲渡所得税の税率
譲渡所得税の税率は、所有期間に応じて変化します。簡単に「5年を超えると税率が安くなる」と覚えておけば、分かりやすくなるでしょう。
●建物の所有期間が5年超
…所得税15%/住民税5%(長期譲渡所得)
●建物の所有期間が5年以下
…所得税30%/住民税9%(短期譲渡所得)
なお、平成25年から令和19年までの間は、計算できた所得税額(基礎控除前)に対して税率2.1%の「復興特別所得税」もかかります。
売却手続き時の課税
買主と交わす契約書には、取引の額に応じて印紙を貼り付けなくてはなりません。1億円までであれば印紙代は下記のように定められており、売買双方負担することになります。
契約金額 | 税額 |
10万円超~50万円以下 | 200円 |
50万円超~100万円以下 | 500円 |
100万円超~500万円以下 | 1千円 |
500万円~1千万円以下 | 5千円 |
1千万円超~5千万円以下 | 1万円 |
5千万円超~1億円以下 | 3万円 |
登録免許税(住宅ローンが残っている場合)
住宅ローン返済中に売却するなら、金融機関の了承を得た上で「抵当権抹消登記」を申請する必要があります。この時、下記の金額で登録免許税がかかります。
抵当権抹消時の登録免許税=不動産1個につき1,000円
※建物を解体せずに土地ごと売る場合、土地+建物で計2,000円かかります。
不動産売却時に使える税制上の特例
負担する税額の中心になる「譲渡所得税」には、いくつか税制上の特例があります。過大申告にならないよう、代表的な特例を押さえておきましょう。
3,000万円の特別控除+軽減税率
売却対象がマイホームであれば、居住用財産を譲渡した特例により、課税譲渡所得金額について3,000万円の控除を受けられます。さらに、所有期間が10年超であれば、長期譲渡所得金額のうち6,000万円まで次の税率になります。
●所得税
…通常15%→マイホーム特例による軽減税率10%
●住民税
…通常5%→マイホーム特例による軽減税率4%
相続した空き家の特例
最近では、相続した両親の持ち家に関する売却相談が増えています。今後誰も住まないことが明らかで、持っていても維持費がかかるばかりになってしまうことが原因です。
実際、売却せずに放置されるケースが多いことから、相続した空き家について3,000万円控除等の優遇を行う特例が始まっています。ここで簡単に、適用要件を押さえておきましょう。
- 建設時期が昭和56年5月31日以前
- 区分所有建物登記がされていない
- 譲渡時まで誰も住んでいない
- 相続開始直前において被相続人以外に居住をしていた人がいない
- 相続開始日から3年目の12月31日までに売却した
- 他の特例の適用を受けていない