田舎に住む親が亡くなり、空き家になった家を、誰も住む予定も無いし、売却しようかというお話は良くあります。
近年ますます増える傾向のある「空き家対策」のひとつとして設けられた
空き家を売却した場合の譲渡所得税を控除できる「空き家の3000万円特別控除」について見てゆきます。
相続した空き家を売却した場合の譲渡所得には、譲渡所得税や住民税がかかります。
譲渡所得金額は、譲渡価額(売却した空き家の売買金額)から、取得費(空き家の土地を購入した金額、建物の購入または建築費から築年に応じて償却した後の金額)と譲渡費用(売却に要した費用)を差し引いて計算します。
譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得金額がマイナスであれば課税されませんが、プラスになり、譲渡益が出た場合に課税される仕組みです。
取得費が大きければ課税はされないことになりますが、昔に取得した土地は金額が安いか、金額自体も不明なことが多いので、その場合は譲渡価額の5%として計算します。建物も古いため償却後の金額が取得費として計算されるので、結果として譲渡益が出てしまい、多額の譲渡所得税、住民税を納付することになります。
譲渡所得税15%、住民税5%、復興特別所得税2.1%(長期所有の一般的な場合)
空き家を売却した場合、おおよそ2割り程度、税金で納めることになりますが・・・・。
「空き家の3000万円特別控除」が使えれば、譲渡所得から3000万円まで控除することができます。
但し要件がたくさんあるので適用できるかは慎重に見極める必要がありそうです。
1.家屋の要件
(1)相続の開始の直前において被相続人がその家屋を居住の用に供していたこと。
(2)昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
(3)区分所有建物(マンション)以外の家屋であること。
(4)相続開始の直前においてその被相続人以外に居住していた者がいなかったこと。
(5)相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていなかったこと。
2.相続人(譲渡する人)の要件
上記1.の家屋及びその敷地を相続又は遺贈により取得した相続人
3.適用要件
平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間で、かつ、相続の時からその相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡したものに限られます。
4.譲渡する際の要件
(1)譲渡価額が1億円以下。
(2)家屋を譲渡する場合、その家屋が現行の耐震基準に適合するものであること。
(公社)全国j宅地建物取引業協会連合会:「あなたの不動産 税金は」より引用
以上のように要件がたくさんあります。
被相続人がお亡くなりになる直前まで居住しているケースも少なくはありませんが、老人ホームなどに入居していることも多いので、「相続の直前において被相続人がひとり住まいをしていた場合」という要件を緩和するために、2019年4月以後の譲渡については、老人ホーム等に入居して空き家にしていた場合にも適用されるように改正されました。
但し、被相続人が介護保険法に既定する要介護認定を受けていなければならない。また、老人ホームに入所してから相続開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ事業、貸付用または他者の居住用に供されていいたことが無いこと。という要件があります。
また、この適用を受けるため、更地にする場合、取り壊し前の建物の写真を残しておくとか、老人ホームに入所中も、いつでも帰れるような状態にしていたとかの状況証拠を残しておく必要もあるそうです。相続税相当額を譲渡資産の取得費に加算することができる特例とは選択性となり、他の特例との適用関係もチェックしなければなりません。親しい親族などに売却した場合も適用外になるようです。
現実的には、昭和56年5月31日以前に建てられた旧耐震の住宅を、耐震基準に適合するようにわざわざ耐震改修して売却することは、費用もかかるし、市場性のある物件になるかどうかの判断も難しいので、取り壊しをして更地として売却するようなケースが多いのかとも思われます。